Equilibrium (邦題:リベリオン)
第三次世界大戦後、第四次世界大戦の勃発による人類滅亡の可能性を感じた都市国家リブリアの中央政府は最高指導者ファーザーの独裁下で、人間の感情を抑制することで殺人や戦争のない「平和」な世界を実現しようとした。
目に入る画面からはファーザーの姿が流れ続け、国民は皆、彼の言葉を聞くのみであった。
感情を刺激する絵や詩、音楽などの芸術品は全て禁忌とされ、特殊捜査員クラリックにより焼却、所有者は即座に処刑された。人々は感情を抱けなくなった。精神を安定させる薬を毎日定刻に注射する必要があり、これを怠ったものも処刑された。笑顔を見せたり涙を流すだけでも処刑対象となった。
妻を感情違反で失ったクラリックの一級捜査員の主人公プレストンは二人の子供と共に決して感情を許さない厳格な暮らしをしていた。
ある日捜査から帰ると同僚が潜入先で見つけた詩を読んでいた。クラリックとして同僚でさえも許せないとプレストンは自らの手で撃った。
その夜、同僚の「貧しい私は夢を見るしかなかった」という言葉が忘れられなかった。動揺した彼は安定剤を落としてしまいその日の薬を打てないまま出勤した。向かった捜査先で出会ったメアリーに生きる意味を問われるが答えられなかった。その後潜入した抵抗勢力のアジトで、偶然絵本や絵、蓄音機が隠された部屋を見つけた。音楽をかけてみると忘れていた感情が呼び起こされた。家に帰るとふとフィルムに包まれた窓に目が吸い込まれた。フィルムを剥がすと、無機質な摩天楼に虹がかかっていた。この日から彼は薬の使用を辞め、社会への疑念を深めていった。
違反品を焼き尽くし、違反者を処刑することが仕事のクラリック。もし全てを焼き尽くしてしまったら、その仕事はどうなるのか。
調査で向かった子犬の殺処分場にて、彼は目の前にした子犬を殺すことができなかった。周りの目を盗んで子犬を持ち帰り、途中の検問で射殺されそうになると彼は逆に警官たちを射殺してしまう。同じ頃、目の前で火刑にされたメアリーを見てさらに感情を動かされた。
プレストンは地下にアジトを作り生活していた抵抗組織と協力し、抵抗組織を政府に差し出すことでその功績をプレストンのものとして最高指導者ファーザーと対面する機会を得た。しかしそこにいたのはファーザーではなく、副総裁と新しい同僚だった。ファーザーはすでに失脚し、モニター上だけの存在であったのだ。
クラリックとして修行を積んできたプレストンは、他の護衛共々倒し、実質的な指導者である副総裁に詰め寄った。絵と護衛に囲まれ悠々と理想の国家を作り上げてきた副総裁は、その瞬間にも死を恐れた。しかしプレストンは死んで償えと彼を...
抵抗組織は安定剤の製造工場を爆破し、安定剤を打てなくなった国民は外へと飛び出した。
Equilibrium (平衡)が保てなくなった社会が動き出したのを見たプレストンが微笑んで幕が降りる。
原題のEquilibrium は平衡という意味。
人々の感情を制御することで良くも悪くも保たれた社会全体の平衡のことが表されているのだろう。
平衡。一旦それが崩れると急速に偏ってしまう危うさを抱えた平衡状態。人間の感情を抑え込んで抑え込んで保たれた平衡が崩れた時のエネルギーはとんでもないことになりそうだ。
ディストピアを題材にした作品では起承転結の構成がわかりやすく、結として「大革命」にて幕を閉じる。しかしその後の世界はどうなるのか、ずっと考えてしまう。
無機質なグレーな世界から、色彩豊かな世界になることを願って。
クリスチャンベイルのアクションがかっこよいのでぜひ映画を見てみてください